ORIGIN
なぜこのプログラムが生まれたのか?
理学療法士 川邊祐詩の体験から生まれたものでした。
何のために医療に携わるのか?
目の前の人のためにしたいことがあるのに、それを躊躇する自分がいた。
大学3年生の頃、自分の進む道に悩んでいる自分がいました。それは、病院にいることに違和感を抱きはじめたからです。
何がその違和感のきっかけだったかというと、ひとつには、病院実習で、あるおばあちゃんを担当させてもらったときのことが思い浮かびます。
100人の生徒を抱える日本舞踊の先生をされていた方だったのですが、僕が病院で出会ったときは、歩くこともほとんどできない状態で、踊ることも諦め、自信をなくされていました。
川邊 祐詩
理学療法士の資格を取得した後、医療者の想いを支援することに共鳴し、新卒でRegie に参画。
ですが、リハビリをお手伝いさせてもらう中で、少しずつ歩くことができるようになり、笑顔が増えていきました。きっとがんばれば踊りもできるようになるし、「おばあちゃん、また踊りたいんじゃないかな?」と思いました。
以前のように上手く踊れないことを気にされているんじゃないかなと直感的に思い、「一緒に踊りましょう」という言葉をかけたい衝動に駆られました。一緒なら、失敗や恥ずかしさも和らぐんじゃないかと。
でも、僕の中で「それは理学療法士の仕事じゃないし、実習でやることじゃない」という声が生まれ、そのときは踏みとどまったんです。
そしてある日、病院へいくと、おばあちゃんが転倒して亡くなったと聞きました…。
「自分はいったい何をしているんだろう?何のためにいるんだろう?」という疑問でいっぱいになり、ぼくは悩みました。
そしてなぜでしょうか、その後、立て続けにもうひとり担当の患者さんを亡くしました。さらには、若年性の癌で友人を亡くすということも重なりました。
葬儀で集まった同級生たちと「生きているうちに、会いたい人に会わないといけない、やりたいことをやらないといけないってことを、教えてくれてるね」という話をし、心に残りました。
ある患者さんが退院時にくれたメッセージを壁紙にしている。自分に正直に接した結果、「理学療法士」ではなく、「友人」だと思ってくれていた。
医療職が変わったら、患者さんも自ずと変わっていく。
医療職の人たちに、「やりたいことをやる」を大切にしてほしい。
それからしばらくして、脳卒中で左半身が動かなくなっていたおじいちゃんを担当したときのことです。
ずっと趣味で風景写真を撮られていた方だったのですが、「もうこれを機にやめるわ」と言っていました。でも、いつも会話をすると、カメラのことばかり話されるんです。病室には写真集をたくさん置かれているんです。
「カメラ、めっちゃ好きやん!やりたいやん、まだ!」と思いました。
でも、カメラを操作することや、移動することは難しい。どうしたらいいだろうと考えている中で、「病院の中にいる人たちは病院の風景ばかりを見ている。おじいちゃんの撮った写真を見せてあげたらいいんじゃないか」と思いつきました。
そして、病院に掛けあって許可を得て、院内の壁にバッと写真を貼ったんです。写真を見た患者さんたちは「すごいね!誰が撮ったの?」と喜び、それを見たおじいちゃんも「がんばるわ」と言ってくれたんです。
これはうれしい体験でした。さっき話したおばあちゃんとの出来事があり、自分が変わったことで、行動に移せたことです。
こうした経験から、ぼくは「医療職が変わったら、患者さんも自ずと変わっていく。医療職の人たちに、やりたいことをやることを大切にしてほしい」ということを、強く思うようになりました。
それが、このプログラムの背景にある僕の想いです。